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準備を終えて、車に乗り込んだ。空は恐ろしいほどに晴れ渡っていた。苦しくないかね。主人になる男が尋ねた。わたしはこくり、と頷いた。花嫁らしい、敬虔な仕草で。
男は幸福たっぷりというような顔で、窓の外を見つめた。お嫁さま、大変お綺麗ですねえ。ドライバーがサイドミラー越しにそう言うと、主人になる男は冗談めかして、プロのメイクはすごいよなあ。と笑った。わたしは答える代わりに、うつむいた。自分が不機嫌であることを、ここにいるすべての人に伝えたかった。だがその仕草は、照れ隠しと受け取られたようだった。
今日という日は不機嫌な仕草をしても、誰にも伝わらないようだった。
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