雨雨坊主

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 なんだかモヤモヤした思いを抱えたまま、家に帰った。運動会のための準備をしていると、明日の空はからりと晴れ上がるでしょう、という陽気な声が、テレビから聞こえた。  わたしは心の中で、つぶやいた。 ー雨だったら、良かったのに。そうしたら運動会は延期か、中止になるのに。  わたしはその瞬間に、ハッとした。慌てて貯金箱をひっくり返すと、三万円あった。  それからランドセルのサイドポケットに入れっぱなしにしていた、あの名刺を取り出して、じっと見つめた。  名刺は相変わらず、じっとりと湿っていた。
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