雨雨坊主

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 運動会当日は、雲ひとつない晴天だった。わたしは昼休憩の間に、トイレへ行くふりをして、一人いそいそと学校の裏口へ向かった。    レインコートを着た男が、ビニールの傘を腕に下げて、待っていた。名前の通り、てるてる坊主にそっくりな見た目をしていた。頭は剃り上げられ、レインコートの裾が、ふわりとワンピースのように広がっている。    なんとも言えない奇妙な姿だったが、出し物のためにコスプレをしている教師かなんかに見えたのであろう、特に男を気に留めるものはいないようだった。わたしはポケットの中に入れた三万円と防犯ブザーを握りしめながら、なるべく堂々として見えるよう、大股で彼の元へと歩いていった。    男は電話をした時と変わらない丁寧な様子であった。わたしが子どもであることにも、全く驚いた様子はなかった。 「それでは、ご要望通りに今から3時間、大雨を降らせてまいります」  そう言うと彼は、ビニール傘をパッと開いて、わたしの頭上へ差し出した。
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