9.さ迷う少女

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9.さ迷う少女

食べかけの林檎を持ち、若菜はまた歩きだした。 風に当たれば気が紛れると思ったからだ。 「寒っ……。」 木々に遮られ、風はヒュウと頬を掠める程度。 忘れていたが、今は虫一匹も出てこない、真冬だ。 すると、遠くの草むらから、ガサッと音がした。 「ひぃっ……。」 熊なんかは、きっといないはず。 なのに、ガクガクと体が震えた。 「何か、いるの?」 返事をするように、また草むらが動いた。 「動けないの……?」 ガサガサと、草むらが大きく動く。 「助けて……あげるね……。」 優しい子……というよりは、ただの馬鹿なのかもしれない。 あんなに怖がっていたのに、体がすんなりと動いている。
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