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15.地獄への扉
木霊は、若菜のその言葉に何も言えなかった。
いつだかと同じような、さやさやと木々だけが揺れる、長い沈黙が続いた。
しかし、それを破ったのは若菜の明るい声ではなく、父親の、二人を嘲笑うような声。
「おーい、もう良いか?」
「仲良しごっこは終わりだ。帰るぞ、木霊。」
父親は鳥籠のような物を取り出すと、木霊を
その中に閉じ込めてしまった。
「おい、何してんだ!」
突然、父親が驚いたような声をあげる。
なんと、その籠に入ったのは、木霊だけではなかったのだ。
「私も一緒に行く!」
「若菜、何言ってるんだ。早くここから出て!」
「嫌だ。木霊を助けるまで帰らない。」
木霊の手をぎゅっと握った若菜は、頑なにそこを動こうとしなかった。
「はっ、また友情ごっこか。良いだろう、今晩の飯にしてやるよ。」
籠を持った父親は、若菜を入れたまま、地獄への扉を開いてしまった。
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