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17.空気
しかし、そんな時間も束の間。
二人の入った籠に、赤い手が伸びてきた。
「まあそうだな。この人間は後で煮るなり焼くなりしとけ。」
籠の隙間から入ってきた赤い手は、木霊の頬へ。
「痛っ……!」
すると、突然研究者が手を引っ込めた。
木霊は、怖くてぎゅっと瞑った目を開け、隣を見る。
そこには、研究者を涙目で睨み付け、研究者の手を払ったであろう右手を握り締める、若菜の姿があった。
「何すんだ人間っ……!」
「木霊に、触らないで!」
「若菜、嬉しいけど、今は駄目だって……!」
木霊は、空気を読まない若菜を一生懸命宥めた。
「空気なんて読まないよ。」
若菜はそう言い切った。
少なからず、分かっていたのだ。
自分が空気を読めていないことを。
しかし、若菜は空気を読もうとはしなかった。
「だって、だって、空気は読むものじゃないから!」
少し感動していたが、怒り狂う父親と研究者を横目で見て、空気を読まなすぎるのも難点だと、少し思ってしまった木霊だった。
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