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1.迷子の少女
「ここ……どこ……?」
静けさの漂う森の奥深くには、若菜の声だけが響いた。
「お母さん、お父さん……?」
八歳の女の子、森下若菜が住むこの町は、翌日小さな祭が開かれる。
そこに出店する予定の母と父は、若菜を連れて森の果実を採りにきたのだった。
「……。」
若菜は、一人で採った林檎を見つめる。
思い出される自分の過ち。
森に着いた親子は、 木々に印を付けながら、奥へ奥へと進んでいった。
「絶対に離れちゃ駄目よ?」
母にはそう言われたが、両親に喜んで欲しいがために、若菜は一人離れて林檎を探した。
「見て見てお母さん! 林檎がなってるよ!」
若菜は一つの大きな木を指差してそう叫んだが、返事は帰ってこなかった。
母と父は若菜がいないことに気付かず、森を離れてしまったのだ。
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