4.木霊の力

1/1
前へ
/38ページ
次へ

4.木霊の力

「ねえ、一緒に外出ようよ! 鬼ってそういう力ありそう!」 若菜の勝手な偏見である。 「そんなのない……。」 木霊は、呆れたようにボソッと呟く。 「んーじゃあ、頑張って二人で帰ろう!」 「僕に、帰る場所なんてない……。」 「捨てられた」、そう遠回しに言ったつもりだったが、勿論若菜には通じない。 「お家ないの? じゃあ、お母さんとお父さんが迎えに来てくれたら、一緒に住めるか聞いてあげる!」 「無理だよ……。」 呆れを通り越して、もはや引き気味だ。 「無理でも、ここでお母さん達待ってた方が良いでしょ?」 さっき「頑張って二人で帰ろう」と言ってたのは誰だったかと突っ込もうとしたが、木霊は口を紡いだ。 「鬼なのに、何も出来なくて……ごめん。」 こんな阿保でも、一応見つけてくれた恩人だと、木霊は小さく謝った。 「いやー、私も、何も出来ないよ?」 若菜の言葉に、少しだけ、「知ってる」と思ってしまった木霊だった。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加