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4.木霊の力
「ねえ、一緒に外出ようよ! 鬼ってそういう力ありそう!」
若菜の勝手な偏見である。
「そんなのない……。」
木霊は、呆れたようにボソッと呟く。
「んーじゃあ、頑張って二人で帰ろう!」
「僕に、帰る場所なんてない……。」
「捨てられた」、そう遠回しに言ったつもりだったが、勿論若菜には通じない。
「お家ないの? じゃあ、お母さんとお父さんが迎えに来てくれたら、一緒に住めるか聞いてあげる!」
「無理だよ……。」
呆れを通り越して、もはや引き気味だ。
「無理でも、ここでお母さん達待ってた方が良いでしょ?」
さっき「頑張って二人で帰ろう」と言ってたのは誰だったかと突っ込もうとしたが、木霊は口を紡いだ。
「鬼なのに、何も出来なくて……ごめん。」
こんな阿保でも、一応見つけてくれた恩人だと、木霊は小さく謝った。
「いやー、私も、何も出来ないよ?」
若菜の言葉に、少しだけ、「知ってる」と思ってしまった木霊だった。
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