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5.片眼の秘密
暫く、沈黙が続いた。
二人の不安な気持ちが森に伝わったように、木々が不気味に揺れる。
「そういえばさ、ずっと気になってたんだけど。」
沈黙を破ったのは、この場に似合わないほど明るい若菜の声。
若菜なりに、気を使ったのだろう。
「その左目、どうしたの? 怪我?」
黒い眼帯が付けられた左目を覗き込みながら、若菜は言った。
「っ……!」
木霊はまた怯えたように震えだすが、若菜は気付かない。
「ねえってば。」
若菜がずいっと近付くと、木霊は精一杯の力で若菜を押し返した。
「いったぁ……。」
「あ、あ、ごめん……なさい。」
樹木に思い切り頭をぶつけた若菜を見て、木霊は慌てたように謝る。
「ううん、大丈夫。あ、でも、左目のこと教えてくれるまで許さないかも?」
「ええっ……。」
とことん空気の読めない若菜に、木霊は眉をひそめた。
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