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8.亀裂
「何処が優しいんだよ。自分の子を誰も来ないような森の中に捨てて、それでも優しいって?」
出会った瞬間との口調の差が凄まじいが、木霊の性格は本来これである。
「来たじゃん! ね?」
落ち着いて、と宥めるが、木霊はふらふらと立ち上がると、何処かへ行ってしまった。
「……。」
溜め息を一つ吐くと、地面に転がる林檎を、一口食べた。
ポロポロと溢れ落ちる涙。
一人になった途端、また不安な気持ちが沸き上がってきた。
外はもう暗いし、不気味な梟の声も聞こえる。
「怖いっ……。」
溢れだす弱音。
「ぐすっ……ぐすっ……。」
その涙に答えるのは、木々が揺れる音だけだった。
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