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 春は嫌いだ。  まるでタイムループにでも嵌ったかの如く、大学新学期の春を繰り返す僕に“春は門出の季節”なんて決まり文句は当てはまらない。  大学生活の定番であるゼミやサークル、部活、委員といったものにも入っていないから“出会いの季節”も同様だ。  薄桃色の桜が咲き乱れても、めでたい気分にはならないから、花見と洒落こむ気分にも当然ならない。  なのにテレビやSNSでは、めでたいめでたいというシュプレヒコールが上がるんだから、たまったものではない。  外を歩いていて、男女が、とりわけ僕と同年代や十代の者たちが親しげな様子で歩いているのを見た日には、その日の気分は少し沈む。
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