特訓

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「じゃあ、浮遊感を味わってイメージしよう。」 そう言った死神さんに連れてこられたのは遊園地。人間たちの悲鳴がありとあらゆる場所で聴こえる。私は、一応学生の姿をしている。死神さんは、老婆だ。 「じゃあ、肩慣らしに珈琲カップに乗ろうかの。行くぞ。」 お婆死神さんに、手を引かれ珈琲カップの列に並んだ。列は、前二五人ほど並んでいた。お婆さんと学生が並んでいる光景は、なかなか無いだろう。 「死に……お婆ちゃん。乗って大丈夫?」 死神さんにお婆さんは、あまり激しいのは乗らないと思うのでできるだけゆっくりという意味を含めて言った。が、死神さんは、手を握り親指を立てて笑った。私の言葉の意味をくみ取ってくれていなかった。 「お婆ちゃん。ゆっくりね。ゆっくりだよ。」 順番が回ってきたので、死神さんを支えるふりをしてゆっくり珈琲カップに乗った。周りのお客さんも乗ったみたいで、店員さんの掛け声で珈琲カップが回り出した。 ゆっくりと回り出した珈琲カップは、少し退屈だった。死神さんの方を伺うと、目を輝かせハンドルを握り私の顔を見ていた。“回させろ”死神さんの意思が嫌なぐらい伝わる。 とはいえ、退屈。 「少しだけ。」 死神さんは、喜んでハンドルを回し始めた。珈琲カップは、徐々にスピードを上げていく。心地よいスピードになった。 「お婆ちゃん。このぐらいでやめよ?」 死神さんは、私の声が聞こえないぐらい夢中で回している。それに比例するように上がるスピード。とうに心地よいスピードは過ぎている。 「き、気持ち悪いよ。お婆ちゃん!ストップ!」 叫んでも死神さんは止まらない。あたりの景色を見ていないのか。周りの景色は、色しか見えない。速すぎてあたりの景色が見えないのだ。 「お婆ちゃん!止まって!」 仕方なく、ハンドルを握った。摩擦で手が熱くなるが、そうも言ってられない。 結局、最後まで止まることがなかった。 勝者は、死神さんで、私は暫く目が回っていた。
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