特訓

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「次はジェットコースター!!」 死神さんは元気に列に並び出す。それを追いかける私。立場は普通は逆になるはずだ。年齢的には。 「お婆ちゃん。元気だね。私疲れたから休憩するね。」 近くのベンチに座ろうと死神さんから離れる。すると、チラチラと死神さんが横目で見てきている。心許ないのだろう。 でも、私は行きたくない。私の大嫌いなものランキングベストIIIに入るジェットコースター。ジェットコースター特有の浮遊感をベルトをしているとはいえ離れそうで怖い。 「私はジェットコースター苦手なんですよ。死神さん。」 小声で聞こえていないであろう死神さんに言う。椅子に座りリラックスしているとはポケットの中で携帯が震えた。ポケットから取り出すと着信元は死神さん。メールは短く五行程度で書かれている。一緒じゃないと特訓を厳しくする、わさびをご飯に入れる等など。つまり、脅しだ。私は、色々やられたくないので仕方なく一緒にジェットコースターに乗ることとなった。 「レバーのチェックしますね。」 そう言って、上から力強くレバーが押される。横の死神さんもチェックされ、死神さんはテンションが上がりに上がっている。どうしようもないくらいだ。 「出発まで……3、2、1、いってらっしゃい!!」 合図の店員さんは、笑顔で手を振っている。店員さん、私には“いってらっしゃい”の見送りの言葉。その言葉が“逝ってらっしゃい”の三途の川の意味に聞こえます。 ジェットコースターが始まると、周りは絶叫系を楽しむ人々だ。死神さんも含めて。上り坂へと差し掛かると、ジェットコースターが一歩一歩という感じで進んでいく。と同時に私の緊張感は増す。ついに到達してしまった頂点。ここから待っているものはひとつしかない。下り坂。若々しい人々は、可愛らしい悲鳴をあげている。一方、私は何も語れなかった。何故なら、もう満身創痍の状態。そこからは、何も覚えてはいない。
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