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「次にハンドルを離してみて」
「えっ? 大丈夫なの?」
理紗が驚いた様に雄二に尋ねる。
「大丈夫、車線の中央に車を維持する様に自動制御するから」
理紗が躊躇いながらも、ハンドルから手を離した。しかしハンドルは左右に自動で動いて、車は車線の中央を完璧に維持していた。
「凄い、これはもう自動運転が完成しているってこと?」
理紗が大きな目で雄二を見ながら言った。
「でも、これはまだレベル2の自動運転だから、運転手に全ての責任がある。自動運転中もしっかり状況を確認して、何か問題があれば直ぐに手動で上書きしなければいけないんだ」
「そうか……。まだ人間が監視する前提なのね」
「そういうことだね。そしてこのルームミラー前側の黒い部分に高解像度カメラが搭載されている。このカメラ画像をADASコントロールユニットの中で高速演算して、先行車との相対速度、距離、そして左右車線からの位置を算出している。その情報をベースにハンドルとアクセル、そしてブレーキを自動制御しているんだ。実際はもっと複雑だけどね」
理紗が頷きながら言った。
「車の技術って凄いのね。私は文系だから細かい理屈は分からないけど、この機能を実現する為に多くの人が知恵を絞っているんだよね。雄二さんもそうだよね。凄いし尊敬する」
そう理紗に言われて雄二は少し照れながら言った。
「僕は世界中で走っている全ての車を電気自動車にするって夢を持っている。それを実現する為には、まだ多くの技術開発が必要なんだ。それに貢献する為、僕自身の技術をもっと磨きたい。地球環境悪化への不安を無くして、僕等の子供達が地球で幸せに暮らせる様に」
理紗はそう言う雄二の横顔から目を逸らすことが出来なかった。自動運転中でなければ事故が起こってしまう程、雄二の顔を見つめてしまった。
彼女は技術で地球環境へ貢献したいと熱く語る雄二を見て本当にカッコいいと思っていた。
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