暴走事故

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暴走事故

 それは突然の出来事だった。  雄二が市立図書館を出て国道横の歩道を歩いていると、後方で車のタイヤの鳴る音と悲鳴が聞こえた。彼が振り返ると銀色のハイブリットカー『プライム』が約百メートル後方の市立図書館の出口からタイヤを軋ませながら左折し国道に飛び出した所だった。 「あの車は確か……? でも何でそんな速度で?」  その車は更に強烈な加速を続けながら雄二の横を通り過ぎた。車内には三名の人影が見える。三人とも先程のイベントでの主役だった人達だった。運転席の老人が目を見開いているのが見えた。後席の若い女性が叫んでいるのも見える。  『プライム』はこの先の赤信号のT字交差点に加速しながら突っ込んでいく。信号待ちしている車を避ける為、車は対向車線に飛び出した。百キロを超えるスピードで交差点に差し掛かると、そのままベビーカー押している女性を跳ね飛ばしたのが見えた。そしてT字路先の廃業した本屋に速度を落とさずに飛び込んだ。物凄い衝撃音と共にそこら中から悲鳴が上がる。  雄二は駆け出すと、丁度、青信号になった交差点を渡り、その本屋に飛び込んだ。 『プライム』は店舗に残っていた本棚を押し潰し、店の奥の壁に衝突して大破していた。  エンジンコンパートメントが完全に潰れ、運転席と助手席、そして後席のエアバッグが展開している。窓は全て割れて、車体は大きく捻じ曲がり、ドアを開けるのは無理そうに思える。中に乗った三人は幸い息がある様だ。頭が動いているのが見える。しかし……。 「ガソリンが漏れているのか!?」  雄二は異臭を感じ、車の下方を覗くと液体が床に漏れ出しているのが見えた。
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