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雄二が社長室を出ると直ぐに、秘書の高橋が秘書室から出てきて、雄二を出口へ案内してくれた。役員室の廊下を歩いていると、前から良く知っている役員が歩いて来ている。彼は研究開発部門のトップ中西副社長だ。
「中西副社長、こんにちは」
雄二は立ち止まり会釈をしながら中西に声を掛けた。
「あぁ、君は確かEVの武川君の所の……川上君か」
中西は雄二のIDを見ながらそう言った。
「はい、そうです」
「どうだ、今日の新型EV進捗会議は順調そうかね?」
雄二は少し考えて自分が把握している事実だけ説明した。
「電動パワートレインの進捗は問題ありません。武川さんからはADASの制御に課題があると伺っています」
中西の顔色が少し変わる。
「ADAS制御か……。 プライムのフィードバックだな。分かった。ありがとう」
そう言うと中西は難しい顔をしながら歩いて行った。
「最近、中西副社長は、いつも難しい顔をされているのですよ。豊国社長が心配されていました」
社長秘書の高橋がそう言いながら雄二をエレベーターホールまで案内してくれた。
「それでは、川上さん。本日はありがとうございました」
高橋に見送られ、エレベーターに乗り込んだ雄二は自分の執務フロアに戻った。
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