パイロットセンス

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パイロットセンス

 豊国図書館オープンの前日の土曜日、雄二は豊国中央駅のロータリーに居た。  社長室に呼び出された日の夕方、会社のメールに理紗からメッセージが届いたのだ。 『川上さん。今日は本当に有難うございました。お礼も兼ねて、もし、ご迷惑でなくてお時間があれば、土曜日に私とドライブに付き合って頂けませんか?』  雄二にとって朝から悩んでいた熱設計変更に目処が付き、一息ついた時の嬉しい提案だった。独り身の雄二の土曜日の予定は真っ白だ。  雄二は直ぐに『YES』と返事をし、豊国中央駅のロータリーで待ち合わせることにしたのだ。  土曜日のこの日も快晴だった。正にドライブ日和の素晴らしい天気。  少し待つと銀色のプライムが走って来るのが見える。運転席にはサングラスを掛けた理紗の姿が見えた。理紗も雄二に気付いた様だ。  プライムは雄二の前で停まり、雄二は助手席に乗り込んだ。理紗が満面の笑みで迎えてくれる。 「豊国さん、今日は誘って頂いて、有難うございます」  雄二は助手席のドアを閉めるとシートベルト手に取りながらそう言った。 「こちらこそ、えっと、雄二さんとお呼びしてもいいですか? 私のことも理紗と呼んで下さい。アメリカ暮らしが長かったので、お友達をラストネームで呼ぶのって慣れてなくて」  雄二が大きく頷く。 「はい、理紗さん。問題無いです」 「それと、もう少しフランクに話しましょう。今日からお友達だから」 「はい、そうですね。いや、そうだね。この車は理紗さんの?」
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