TTC

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 雄二のオフィスは豊国中央駅から二つ先の東豊国駅にあった。この駅裏の再開発エリアに世界有数の自動車会社である豊国自動車がテクニカルセンターを開設したのは二年前だった。  豊国テクニカルセンター(TTC)と呼ばれるその施設は、豊国自動車のグローバル車両の研究開発を全て担っており、八千人の従業員が勤務していた。  雄二はこのTTC内にある電動車両開発部EVシステム第一開発課の設計担当者だった。まだ入社三年目であったが、彼のリーダシップや技術力が評価され、今では新型EVの電動パワートレイン(モーター、インバーター、トランスミッション)の設計リーダーを務めていた。  雄二の夢は世界中で走る全ての車を電気自動車にして、走行する車両からの二酸化炭素排出を抑制させ地球温暖化や大気汚染を防止することだった。その想いを胸に就職活動を進めているときに、最近までハイブリット車しか開発して来なかった豊国自動車が電気自動車(EV)の開発を始めるというニュースを聞いた。雄二はそれまでEV開発が進んでいる日清自動車を就職の第一候補としていたが、このニュースにより、自宅にも近い豊国自動車の入社試験を受けて、見事この会社への就職を果たしていた。
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