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今日の開発進捗会議はデジタルデーターでの開発進捗を最終確認して試作・生産準備に移行出来るかを判断する重要な開発節目だった。
「俺の所は良いんだが、大森の所がいくつかの課題がある様だ」
武川は自分のワークステーションの画面から視線を外さずにそう言った。
「大森課長ですか。ADAS制御開発ですね」
ADASとはAdvanced Driver Assistance Systems、日本語で先進運転支援システムのことだ。自動ブレーキや先行車追従クルーズコントロール、レーンキープアシスト等の運転者を支援する簡易自動運転機能の総称で、現在の自動車開発の中でも花形と言える。
「そうだ。ハイブリットチームからのフィードバックで、いくつかの修正が必要になったらしい」
雄二は自席に戻り大きく伸びをすると、二八インチのスクリーンが二面備わった自分のワークステーションを起動させた。そこには昨日、進捗会に使う為に使用したCATIA(三次元CAD)上の図面データーが開いたままになっていた。それを保存して閉じると、最新のモーター3Dデーターを呼び出して、実験シミュレーションで課題が見つかったステーターコアの再設計に入った。駆動モーターの熱性能不足が顕在化しており、雄二はここ数日、その対策に頭を悩ませていた。
「ステーターの冷却水経路を見直さないと……温度勾配の値は……」
そのまま雄二は設計に没頭して行き、ハッと気付くと既に出社して二時間が経過していた。
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