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突然、雄二の席の電話が鳴った。内線の呼び出しだ。
「はい川上です」
「川上さん、秘書室、高橋と申します」
雄二は唐突な秘書室からの電話に驚いていた。
「はい、御用は何でしょうか?」
「突然、申し訳ございません。今から豊国社長のお部屋にお出で頂けませんか?」
雄二は頭を捻った。社長からの呼び出し? 何かトンデモナイ失敗をしてしまったのだろうか……?
「如何でしょう? 今からお時間はございますか?」
雄二が返答しない為、電話先の女性がもう一度問いかけてくる。
「いえ、大丈夫です。それでは今から伺います」
「それでは29階の役員フロアまでお願いします。エレベーターを降りた所でお待ちしておりますので」
雄二は作業していたデーターを保存し、席から立ち上がった。そして椅子に掛けていた制服の上着に袖を通すと、課長席で作業をしている武川に声を掛けた。
「ちょっと出掛けて来ます」
「どこに行くんだ? 実験棟か?」
顔を上げた武川が当然の質問をしてくる。
「社長室です」
「そうか……。えっ? 社長の所に行くのか? さっきの電話、社長からの呼び出しか?」
「はい、その様です。行ってきます!」
驚いた様に雄二を見つめている武川を背中に、雄二は急いで開発部のセキュリティードアを抜けるとエレベーターホールに出た。
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