TTC

4/4
前へ
/93ページ
次へ
 突然、雄二の席の電話が鳴った。内線の呼び出しだ。 「はい川上です」 「川上さん、秘書室、高橋と申します」  雄二は唐突な秘書室からの電話に驚いていた。 「はい、御用は何でしょうか?」 「突然、申し訳ございません。今から豊国社長のお部屋にお出で頂けませんか?」  雄二は頭を捻った。社長からの呼び出し? 何かトンデモナイ失敗をしてしまったのだろうか……? 「如何でしょう?  今からお時間はございますか?」  雄二が返答しない為、電話先の女性がもう一度問いかけてくる。 「いえ、大丈夫です。それでは今から伺います」 「それでは29階の役員フロアまでお願いします。エレベーターを降りた所でお待ちしておりますので」  雄二は作業していたデーターを保存(セーブ)し、席から立ち上がった。そして椅子に掛けていた制服の上着に袖を通すと、課長席で作業をしている武川に声を掛けた。 「ちょっと出掛けて来ます」 「どこに行くんだ? 実験棟か?」  顔を上げた武川が当然の質問をしてくる。 「社長室です」 「そうか……。えっ? 社長の所に行くのか? さっきの電話、社長からの呼び出しか?」 「はい、その様です。行ってきます!」  驚いた様に雄二を見つめている武川を背中に、雄二は急いで開発部のセキュリティードアを抜けるとエレベーターホールに出た。
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

91人が本棚に入れています
本棚に追加