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図書館開館イベント
理紗とのドライブの翌日、雄二は午前十時の市立図書館の開館に合わせ、三十分前に自宅を出た。交差点の先、図書館の入口には既に物凄い人集りが見える。既に図書館の門は開いていたが長い列が図書館の敷地の外まで続いている様だ。
今日のオープニングイベントには豊国市出身で今を時めく若手女優『川橋麗奈』がゲストとして参加する他、この私立図書館建設費の八十パーセントを出資している豊国自動車から豊国前会長夫妻が参加しオープニングスピーチを行う予定だ。
雄二が図書館の外に続く長い列に並んでいると後ろから突然声を掛けられた。
「雄二さん、おはようございます」
雄二が振り返ると理紗が笑顔で雄二を見つめていた。
「あっ、おはよう。理紗さん」
「一般の列に並ばなくていいんですよ。雄二さんは関係者ですから」
「えっ?」
「だって祖父が渡したのはスペシャルチケットですよ」
驚いて雄二が持っていたチケットを見ると『イベント関係者』と書かれた表記が見える。
「多分、分かっていないかなと思って。 こっちです」
そう言うと理紗は踵を返して列の反対側に歩いていく。交差点の角を曲がった所に従業員用の小さな入口があり、二人がチケットを見せると『イベント関係者』と書かれたIDを渡された。それを首に掛けてセキュリティーゲートを抜けると、そこには地上六階建ての真新しい市立図書館の建物が聳え立っていた。
「こっちよ」
理紗に先導され建物の一つのドアから中に入ると、そこは三階まで吹き抜けの広いロビーになっており、その奥に三層に分かれた図書スペースが見える。既にイベントの準備はほぼ完了しており、何人かの人々が最後の調整を行なっている様だった。
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