お嬢様と執事のある日の3時

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今日はお嬢様がずっと部屋から出てきていない。時間はもう3時だ。今日は休日だが、いくらなんでも寝すぎなので俺はお嬢様を起こしに行くことにした。きちんと3時のお菓子を持って。 「お嬢様、3時のおやつをお持ちしました。」 俺は寝ているであろうお嬢様にドア越しに声をかけた。 「…」 「お嬢様…?」 返事がないのでもう一度呼びかける。 すると唐突にドアが開いた。 「佐藤、今何て言ったの?」 中から顔を覗かせたお嬢様の髪はくしゃくしゃでパジャマは少し着崩れている。俺は長年連れ添っている執事だから男として見られてないのは分かっているが、もう少し俺の前でも年頃の女らしくして欲しいものだ、と心の中でごちた。まぁくしゃくしゃの髪もパジャマを着崩している姿も自分だけが見れる、と思えば良いものだが。 「3時のおやつを「さんじ?」 お嬢様は寝ぼけているらしい。俺はそんなお嬢様に現実を突きつける。 「えぇ。ちなみに今は午後3時3分です。」 「…じゃあ私が早起きして佐藤とお出かけしたのは夢だったの…?」 「!」 そう言いながらお嬢様は俺にしがみついて涙目と上目遣いのダブル攻撃を仕掛けてくる。もちろん無意識だ。これは反則だろ、と思いつつも俺は必死に平常心を保つ。 「お嬢様、手を離してくだ「楽しかったのに…」 俺の言葉を遮り、少し拗ねたようにそっぽを向くお嬢様。そんなお嬢様が可愛くて俺の顔は少し赤くなったので、お嬢様を軽く抱きしめて自分の赤い顔を見せないようにする。お嬢様はびっくりして固まっているが、お嬢様が可愛すぎるのが悪いのでしばらく自分の顔の赤みが引くまで抱きしめておく。それから大きく息を吐き自分を落ち着かせる。 そして俺はお嬢様に声をかけた。 「さぁ身支度を整えますよ。」 と。 「ん?佐藤?身支度を整えてどうするの?」 お嬢様は俺の言ったことの意味が理解できなかったらしく、上目遣いでこっちを見つめてくる。本当に無自覚な人はひどいと思う。可愛すぎてやっと引いてくれた顔の赤みが戻ってきそうだ。まぁ必死に平然を装うが。 「お出かけしたいんでしょう?今日は外でディナーに致しましょうか。」 「え?…ほんとに!?」 嬉しそうに飛び上がって俺にに思いっきり抱きついてくるお嬢様。全く可愛らしい人だ、と思いながらおれはお嬢様の髪を軽く撫でた。少し照れたようにお嬢様は顔を赤らめてにっこりと笑った。
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