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鬼は、先ほどまでの姫との会話を思い出しながら、賑やかな宴席を見回す。
「姫は、こういうところで育ってきたんだなあ」
若干ろれつが回らなくなってきたのか、いつもよりはるかにのんびりと鬼が呟いた。
「そうだな」
鬼がなにを言わんとしているか、天狗にはよくわかる。
「まあ、姫さんも大変だよね。良い子なのに」
小さいけどな。
小さいけどね。
と、末姫や烏天狗が聞いたら激怒しそうな軽口を叩いて、二人はしばし無言で酒を飲む。
「がんばれよ」
おもむろに鬼の肩を軽く叩きながら、天狗が言った。
なにが、と問う鬼を置いて、天狗は大広間から出て行ってしまった。
天狗の姿を目で追いかけ、体も自然とよじる格好になった。
直後、鬼の視界がくるりと反転し、そのまま畳に後頭部を打ち付けた。
ゆらゆら回る天井を見上げ、そういえば姫はいつ戻ってくるのだろうと漠然と考える。
思いのほか酔いが回った頭はすでに思考することをやめ、鬼は眠りについていた。
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