2.天狗の嫁とり(前編)

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烏天狗は、大天狗を尊敬している。 仕事もできる。包容力もある。下っ端の自分に接するときにもきちんと目を見て話してくれる。 何より、ややいかつい顔が好みなのである。 彼女は18歳になった。 幼少の頃から、ひときわ(つやや)かな、文字通り(からす)濡れ羽色(ぬればいろ)の長髪、きりりとした目にやや厚い唇が、迫力のある美人顔に適度な色気をもたらしている。 そして、立派に成長したのは何よりもその肢体(したい)だ。 「奥様、どうして私が選ばれたんですか?」 山の頂上の、さらに木の上から、ふもとの村を一望しながらため息混じりに彼女は言った。黒い羽は軽く畳んである。 奥様、と呼ばれたのは、隣の木の枝に座っている妙齢の烏天狗だ。肩までの黒髪と落ち着いた笑顔に、年齢以上の余裕を感じる。 しかし、答える口調は極めて軽い。 「うーん、若い子たちの中で一番胸が大きいからかしらね」 脱力する。 そこか。やっぱりそこか。
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