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烏天狗は、大天狗を尊敬している。
仕事もできる。包容力もある。下っ端の自分に接するときにもきちんと目を見て話してくれる。
何より、ややいかつい顔が好みなのである。
彼女は18歳になった。
幼少の頃から、ひときわ艶かな、文字通り烏の濡れ羽色の長髪、きりりとした目にやや厚い唇が、迫力のある美人顔に適度な色気をもたらしている。
そして、立派に成長したのは何よりもその肢体だ。
「奥様、どうして私が選ばれたんですか?」
山の頂上の、さらに木の上から、ふもとの村を一望しながらため息混じりに彼女は言った。黒い羽は軽く畳んである。
奥様、と呼ばれたのは、隣の木の枝に座っている妙齢の烏天狗だ。肩までの黒髪と落ち着いた笑顔に、年齢以上の余裕を感じる。
しかし、答える口調は極めて軽い。
「うーん、若い子たちの中で一番胸が大きいからかしらね」
脱力する。
そこか。やっぱりそこか。
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