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「確かにあの狐を森に連れていった時は、周りの狐はすごい騒ぎようだったな」
道中、怯えて隠れようとする動物たちになんとか狐のすみかを聞き出し、やっとのことで目的地にたどり着いた時には、もう日は上りきっていた。
「そうなの。なんでも昨夜、狐の姿で休んでいたところを人の子供にさらわれたとかで、ほかの狐たちは夜通し捜索していたのよ。末姫は何度か会ったことがあるし、私も心配だったの。本当に良かったわ」
はいどうぞ、とお茶請けを渡された。今日は干菓子だ。
へえ、と一つ頬張る。
「末姫って誰だ」
「あんたが助けた狐よ。尾が三本の末っ子狐」
姫は可愛いのよー、小さくてね!とうっとりしながら烏天狗が言う。確かに腕にすっぽり収まるくらい、小さかった。
末っ子というし、まだ子供なのだろう。
「尾は、三本じゃないのもいるのか」
ふと聞いてみると、烏天狗がすらすらと答えてくれた。
「力を持つ狐の尾は、長が九本で、直系の子供たちは、九本ないしそれに近い本数に分かれているの。でも末姫は三本で、更に体も小さいから力があまり無いみたいね」
捕まったときも、疲れて変化が解けちゃったのかしら、なんにせよ見つかって良かったわと、狐を発見した鬼のことは無視して烏天狗は喋り続けている。
「そうだな。よほど末姫が見つかったのが嬉しかったんだろうな」
天狗は、もう勝負がつきそうな盤上の駒を、無造作に集めた。
「鬼、お前に礼が言いたくてわざわざここまで来たみたいだぞ」
客人だ、と天狗が指した方を鬼が見ると、白い面を付けた十数人の集団が、いつの間にか木立の向こうに立っていた。
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