もうひとつの家族

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当時の依頼の内容というのはですね。 森「よくある話と言えばよくある話ですけど、“うちの息子がいよいよおかしくなって、どうすればいいかわからない”っていうね」 まぁよくある話と言えば、よくある話です。 森「当時、精神科の受診もした程やと、ご家族は言うてましたが、結果的には涼太は精神科で、一言も話さなかったそうです」 だから、何がどうとかはわからないままで、通院を勧められたが、一切涼太は応じず、以降は大学にも行かず、部屋に引きこもってしまったと。 が。 森「普通なら、まぁ“引きこもり”と位置付けられたとは思うんですけど、涼太の場合は違ったんです」 何がどう違ったのか聞くと。 森「引きこもる前日に、涼太が言うたそうです」 『音楽なら別に“ここ(自室)”でもできるから』 と。 それはどうしてか家族が聞くと、涼ちゃんは言うたそうです。 涼「教えてくれるから、“この人”が」 と。 俺「この人って?」 森「涼太のそばにずっといた、女の人でした。それは“涼太にしか見えていない人”で、それは涼太もわかっていたんです。だから涼太は家族に言うたんです」 『ふたり(両親のこと)には、見えてないやろうけど』と。
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