もうひとつの家族

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森「まぁ、だからといって感情移入するのはご法度なので、私は一通り話を聞き、それを持ち帰る役目やったんで、そうしようと思っていました、その時は」 と、今しがたうどんを平らげ、前歯にまさかの薬味のネギがついたままのモーリー言いました。 (ネギは放置することにします) 森「私が話を聞いている最中、後ろから視線は感じていたんで、まぁ“この人”が、涼太に話をしたんやろうって察しはつきました」 立ち聞きというよりは、普段ない光景が気になって見に来たんでしょう、とモーリーは言いました。 森「でもどちらかというと穏やかで、悪い感じはなく、むしろ逆で、見守っている…そんな感じはしました」 だから直後、モーリーが、「息子さんに声をかけてもいいですか?」とご両親と、“この人”に言うたそうです。 ご両親は、「いいですけど、何の返事もないと思います」と言い、“この人“は黙ってみていた、と言いました。 森「話はできなくても、なんとなく“感じ”を掴めたら、それも報告材料になるんじゃないかと思ったんです」 てことなんで、さっそく二階の涼ちゃんの部屋でノックをして声をかけたそうですが、応答なし。 森「私はちょっと“中の様子”を探りたかったんです。まぁさほど問題があるようには感じませんでしたし、何より”この人”自体がまるで悪いものでもなかったんです」 その時、どんな声をかけたかは忘れたんですが、と。 森「どんな言葉にも、涼太は反応しませんでした。それどころか、しまいにはピアノを弾き出し、むしろ鬱陶しかったんでしょうね。だから最後に聞きました」 『今日は帰りますが、今度話をしませんか?』と。 そしたら、涼太からの返事はないものの、“この人”が答えたそうです。 『いいですよ』と。
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