もうひとつの家族

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当時繰り返していた面会では、一度も涼太には会えていなかった森岡氏。 雑談相手は、もっぱら中にいる“誰かさん”。 森「なんとお呼びしたらいいでしょうか?」 と名前を聞いたことがあるそうですが、それには答えてもらえなかったそうで、以降は聞くことをやめたそうです。 “誰かさん”から感じたことをまとめると。 ・優しくて穏やかであること。 ・涼太に対して危害を加えようとしている様子はなし。 ・涼太にとっては理解者であり、家族愛のようなものを感じる。 ざっくりまとめると、こういうことだそうです。 森「そう感じたので、同じことを丸尾さんにもお伝えしました」 そして思ったことも、そのまま口にしたそうです。 森「“悪い者ではない”、そう思う人と、共存することはできるんじゃないか」 そう言うた時のおまるの返事に、自分は浅はかで、考えさせられた、と森岡氏は言いました。 『“共存”と“依存”は、全くの別物で、それがその人(涼太)にとって、本当に幸せなことなのか』 そして忘れてはいけないことが。 『“死者”が“生者”に対して、人生を左右するかもしれない影響を及ぼしていいわけではない』こと。 死者である“誰かさん”の人生はもう終わっていて。 生者である涼太の人生は、まだ終わっていないこと。 そのことを忘れてはいけない、とおまるに言われたそうです。 森「ハッとさせられました。私はなんて生ぬるい、浅はかな考えやったんやろうと。私は涼太に対して、少なからず“このままではいけない”と思っていたんです」 だから、“友達大作戦”を決行したのに、と森岡氏。 森「根本を忘れていました。そう言われて、やっと私は行動する気になれました」 タイミングは今しかない、と。
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