23111人が本棚に入れています
本棚に追加
リン君と家の外に出てみました。
玄関を出て、門に行くまでの洒落た石畳を右に抜ければ、広いリビングに続く中庭があり、そこのポツンと、母ではない女性が立っていました。
ジッとリビングを見つめていて、俺がちょっと近づいたらピクッと反応あれど、変わらずリビングを見つめるんです。
俺「お母さんおらんくなったから来たんかな」
リ「このご家庭が成り立っていたのは“母の存在”あってこそだとしたら、いなくなった今、崩壊してもおかしくはないでしょう」
女性はリビングを見つめながら、ずっと自分の名前(かと思う)を呟いてるんです。
『私です。〇〇です。お元気ですか?〇〇です』
『私です。〇〇です。お元気ですか?〇〇です』
『私です。〇〇です。お元気ですか?〇〇です』
しばらく黙って。
今度は泣き出したかと思いきや、不穏な空気で叫ぶんです。
『別れたくないです』
『私を家にいれて』
『××君、××君』
それはそれはシクシクと。
名前から察するに、この女性はずっと、この家族の父親を呼んでるんですよ。
おそらく過去の愛人の誰かで、父親に対する未練から、生霊が会いに来た。
そんなところやろうなと、思うわけです。
最初のコメントを投稿しよう!