教科書にない話。

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“命”というものは等しく大事で、尊いもので。 でもそこに“名前”がついた命はどうやろう。 等しく平等に、他人と同じかと聞かれたら? それが家族やったら? 大事な人やったら? という話なんですよ。 時「梨奈ちゃんという“名前のついた命”は、梨奈ちゃんのママにとっては、世界中どこを探しても、代わりなどいない、一等大事な“命”なんですよ」 それと同じで、梨奈ちゃんにとっても、世界でひとりしかいないお母さんやからこそ、さっきの二択でも、ママを助けたんでしょう、と時子さんは言いました。 お母さんにとって、胎児の頃、まだ“名前のついてない”であろう、“名前のつく命”を愛しく想うのは、その命がかけがえのないものやと感じているからで。 時「どこの家の子供さんより、我が子を一番に守りたいと思うのも、差別になるでしょう」 同じ“命”であっても、決して同じではなく。 その差別が、時に愛しく感じたり、憎く感じたり。 梨「じゃあ、“名前のつかない命”って?」 それはね?と時子さん。 時「“名前がない”のではなく、梨奈ちゃんが知らないだけで、どこかの誰かにとっては、かけがえのない“名前のついた命”なんですよ」 その人を愛しく想う人がいて、何より大事に想う人がいてるとしたら。 時「梨奈ちゃんにとっては“名前のない命”でも、この人も自分と同じように想ってる人がいてると思えば、大事にしなくてはいけませんね」 それこそが“命”であり、尊いものであるということなんです。
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