教科書にない話。

11/15

23111人が本棚に入れています
本棚に追加
/172ページ
かといって、何かあったとして万人を助けるなんてことは、さっきの例題においても難しい局面でもあると、時子さんは言いました。 時「救えなかった命があったとして、梨奈ちゃんはどう思いますか?」 と聞けば。 梨「見捨てたいわけじゃないし助けたかったけど…。きっと悔しいし、悲しいって思う」 と言えば。 時「そう思えるということは、例え自分にとっては“名前のない命”でも、“命”というものに重みを感じ、大事に想うからこそ、悔しくもあり、悲しくもなるのでしょう」 その“命”を忘れずに。 そこにあったことを忘れずに。 いつでも“命”というものに向き合い、“命”というものの考え方を重んじていれば、世の中のイジメなんかは、もっと減るんじゃないか。 俺はそう思うんですよ。 目の前のこの人、通勤通学ですれ違う赤の他人ですら、どこかの誰かにとっては“名前のついた”大事な命なんですよ。 動物も然り。 同じ種類でも、自分ちの子が一番と思うでしょ? 同じ種類でも一番に助けたいと思うのは、“名前のついた”世界で代わりのいない、その子でしょう。 家族の、友人の、恋人の。 代わりなんてこの世におらんのです。 だからこそそこに、どうしても“命の差別化”は生まれてしまうんです。
/172ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23111人が本棚に入れています
本棚に追加