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かといって、何かあったとして万人を助けるなんてことは、さっきの例題においても難しい局面でもあると、時子さんは言いました。
時「救えなかった命があったとして、梨奈ちゃんはどう思いますか?」
と聞けば。
梨「見捨てたいわけじゃないし助けたかったけど…。きっと悔しいし、悲しいって思う」
と言えば。
時「そう思えるということは、例え自分にとっては“名前のない命”でも、“命”というものに重みを感じ、大事に想うからこそ、悔しくもあり、悲しくもなるのでしょう」
その“命”を忘れずに。
そこにあったことを忘れずに。
いつでも“命”というものに向き合い、“命”というものの考え方を重んじていれば、世の中のイジメなんかは、もっと減るんじゃないか。
俺はそう思うんですよ。
目の前のこの人、通勤通学ですれ違う赤の他人ですら、どこかの誰かにとっては“名前のついた”大事な命なんですよ。
動物も然り。
同じ種類でも、自分ちの子が一番と思うでしょ?
同じ種類でも一番に助けたいと思うのは、“名前のついた”世界で代わりのいない、その子でしょう。
家族の、友人の、恋人の。
代わりなんてこの世におらんのです。
だからこそそこに、どうしても“命の差別化”は生まれてしまうんです。
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