Accident

2/15
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
 今でも眠ろうとすると、友人を殺したときの映像が鮮明に思い出されるし、手にはその時の感覚が生々しく蘇ってくる。その度に僕は胸が苦しくなり、吐き気を覚えなければならない。今ではすっかり睡眠薬の常習者で、薬がなければ眠ることすらできない。  その不運な事故は、学校の休憩時間に起きた。僕が席について本を読んでいると、友人の友樹(ともき)が傘を持って来て、突然襲いかかってくる。もちろん、本気で襲いかかってきたわけではなく、冗談半分でやっただけのことだ。僕はすぐに自分の傘を手にとって、友樹に応戦した。  そのとき、僕が使っていた傘は、先端が細い金属になったビニール傘だった。大人になった今なら、そんなものでチャンバラなんかしたら危ないということくらい容易にわかる。だけど、小学二年生の僕にはそんな感覚など少しもなかった。  教室の後ろの方で友樹と傘でチャンバラをしていると、すぐに周りにギャラリーができた。みんな勝手に僕たちを囃し立てる。僕たちはそれで調子に乗って、更に激しくチャンバラを演じる。  僕が傘で軽く友樹を突こうとしたそのとき、誰かが悪ふざけをして、僕の足を引っ掛けた。僕はバランスを崩して、そのまま友樹に覆いかぶさるような形で倒れる。その瞬間、妙な感覚が傘を持つ手に走った。その感覚の正体が何なのか、すぐにはわからなかった。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!