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午後3時。
新しい街での安宿にチェックインした。
日が明るいうちに、街を把握しに出かけよう。
ターゲット候補の物色。
交番やコンビニの位置確認。
万が一の逃走ルート。
先程の悪夢の影響だろうか。
僕が生まれ育った監獄の様なアパートが目について、頭から離れない。
こんな家に押し入っても、稼ぎにはならない。
だけど、共用廊下に放置された埃塗れの三輪車がやけに気になる。
というか、自分の記憶とオーバーラップする。
可愛い盛りのはずの子供の三輪車。
持ち主は死んでしまったか、虐待を受けてるか、どっちかだと直感する。
僕の家がそうだったから。
しかも、小学校にあがっても、補助輪付きの自転車も貰えず、三輪車のままだった。
【102号室】の玄関ドアには『セールスお断り』のステッカーが貼ってある。
表札はない。
集合ポストを見る。
【102号室】のネームプレートは、褪色し読みづらいが『阿松』と読み取れた。
チラシやゴミ箱直行になりそうなDMが溜まっているが、新聞はとっていない。
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