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ふと駅の事務室をよく見てみると、見覚えのある赤い傘が、事務室内の傘立てに置いてあるのに気が付いた。
「あ!?あれですよ、あるじゃないですか。あれ僕のですよ!あの赤い傘!」
「何ですか急に!?まるで傘を得たト◯ロみたいに!まったくはしゃがないで下さいよ大人げない」
「す、すいません…でもあの傘は確かに僕の…」
正確には僕の彼女のだが。
「正確には彼女のでしょ」
お前が言うとなんか鼻に付くな!
僕は傘立てから傘を取ろうとするが、駅員がそれを阻み一向に返そうとしない。
「はやく返して下さいよ」
「いや、ちょっと今は無理なんですよ」
「いや返して下さいよ!」
僕は無理矢理傘を奪った。何とその傘は折れておりガムテープで補強してあった。
「ちょっと折れてるじゃないですか!」
「今見えているものだけが真実じゃないかもしれない!」
「何カッコいいこと言ってごまかそうとしてるんですか!今見えているものが、まぎれもない事実じゃないですか!」
観念したように駅員が言った。
「日曜ゴルフだからスイングの練習をね…つい力が入りすぎちゃって、手から離れてポーンとね、ポーン…ボーン(骨)なんつって」
「おもしろくねぇんだよ!いい加減骨から離れろや!」
駅員に悪びれた様子がないので思わず突っ込んでしまった。
「弁償してくださいね」
「…お客さんそりゃ無理だわ。今月財布の中身が赤字でね、ね?」
もぉエエわーーーー!
その日僕は彼女に自腹で傘をプレゼントした。
皆様、忘れ物には十分注意しましょう!
~おしまい~
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