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葡萄酒
「近衛の騎士様に何があったのです?」
騎士はしばらく考えた後、口を開いた。
「襲撃された。突然のことだった。一緒にいた者達は散り散りになり、命からがら逃げてきた」
「それは大変でしたね……」
「そうだった、こうしてはいられない、もう充分休んだ。王子を探さなければ…」
騎士が立ち上がろうとすると、力が入らずに倒れ込んだ。
男が手を貸す。
「今日はもう休みましょう」
「休んでいる場合では…」
「でも、足が立たないでしょう」
負傷した左足にはいつの間にか包帯が巻かれていた。
足は動くが、頭が朦朧として体が酷く重たかった。
「お前……何を飲ませた?」
騎士は切れ長の目で男を睨んだ。
「察しが良いですね」
「襲撃した奴らの仲間か?」
「いいえ。私はただ、この森で獲物を待っているだけです」
「獲物?獲物とは……」
言い終わらないうちに、騎士の視界は白んで欠けていったーー。
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