獲物

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獲物

 騎士はうっすら目を開ける。  体の上を、大量の蛇がのたうち回っているような感触で目覚めた。  「目が覚めましたか」  男が騎士を見下ろす。  地下牢のベッドに騎士は横たわっていた。  ランプの光の下、体の自由を奪っているものの正体があらわになる。  「う…」  蛇のような感触は、無数に伸びる触手だった。  表面は粘膜で、騎士は薄気味悪さに吐き気がした。  「この触手達は食欲旺盛で、ひと月に何人か獲物が必要なんです。今、生気を吸い取られているのが分かりますか?」  服の隙間から、次から次へと触手が潜り込み、先を争うように吸い付いていく。  騎士は触手を1本掴むと、素手で引きちぎった。  「力が強いですね」  男は顔色一つ変えず、観察するかのように見下す。  引きちぎった所で、次から次へと湧いてくる触手に、騎士は次第に力を失っていった。
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