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「色々とお話すると長くなるので、今は言えませんが……亡くなったのが2ヶ月前なんですけど、詩音ちゃんはその翌日から一言も話しません。
お医者さんは声帯機能に問題はないからお姉ちゃんの心の問題だねって……
やからあんな態度で冷たく見えるかもしれないんですけど、詩音ちゃんのこと怒らんとって欲しいんです」
そう話す花音の目には少し涙が滲んできた。
「そうやったんか…」
俺は呟きながら少し気掛かりだった詩音の暗さがどこか腑に落ちたような気がした。
しかし突然の話にこの歳下の女の子になんと声を掛けていいか言葉が、出ないでいると…さすが精神年齢不詳の広斗。
「そうかそうか。花音ちゃん、初めましてやのに話しにくいこと教えてくれてありがとうな。今日から俺らは一緒に暮らすし詩音ちゃんの事も怒らへんから心配せんでえんよ」
そう言って広斗は花音の頭をポンポンと撫でると、我慢できなくなったのか目に溜めた涙をポロポロと零しながら
広斗に抱き付いて、声を上げずに花音は泣いた。
あぁ、きっと二階にいる姉に泣き声を聞かれまいと声を押し殺しているのだろう。
その姉想いな子供らしからぬ行動、そして事情は知らないが周りに頼る人がおらず
明るくハキハキと振る舞ってきたのは虚勢で
本当はこんな風に普通の小学生らしく
泣いて誰かにあやして欲しかったんだろう。
花音も花蓮という姉を亡くしたのは同じだ。
花音の泣いている姿を見ていると様々な背景が垣間見えるようで、胸が熱くなった。
今日から俺たちが家族だ。
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