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「大丈夫や、健ちゃん。俺らが付いてるから心配せんでええよ。ていうか転校初日に兄貴が教室に怒鳴りに来るんは逆効果やろ」
おった、まともな奴が1人。
いや、広斗1人しかおらへんの間違いや。
ちなみに俺はこうやってたまに誰かが兄貴と呼んでくれる事が嬉しい。
例え擬似だとしても。
「頼むわな、ホンマに」
広斗の言葉にホッと胸を撫で下ろし、俺は広斗の肩をトンと叩いて託すように言った。
そんなリビングで男会議をしていたところへ詩音が二階から降りてきた。
「おはよう、詩音。今日から学校やからお弁当持っていきな? 広斗が一緒に行ってくれるさかい」
さすが、我らがかん。
俺たちの名前すら出さず広斗が付いてると一言だ。
詩音はこくっと頷いただけだった。
詩音の笑顔もまだ見たことはない。
しかし新しい学校の制服に身を包み、いつもは下ろして何もしていなかったロングヘアをハーフアップにまとめておめかししているあたりから
新しい学校への緊張は伺えた。
あぁ、例え喋らなくともこの猫目の美人を男性が放っておくわけがない。
なんて少しお門違いの心配も湧き上がる。
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