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「竜星も電話でえへんし……アイツほんま何しとんや……」
学校へ向かいながらそう呟く広斗には焦りからか苛立ちの様子が伺える。
道中も詩音の姿を探すも見当たらなかった。
そもそもこの街に来てまだ日が浅い詩音が遠くに行くとは思えない。
俺たちは心当たりのあるところ全て走り回ったが、詩音の姿は無かった。
「あかん。暗なってきたな……」
探し疲れた俺たちは近くの公園のベンチに腰を下ろす。
もうすっかり夜だった。
まさか……花音に話をまだ聞けていないが、前に住んでた街へ1人で行ったのだろうか?
18歳になるまでホームにいた俺の兄貴分の様な存在が過去に何人かいたのだが、たまにそんな事があった。
しかし大抵は前の家族の元へ帰っても酷い現実を見て自らホームへ帰ってくる……という悲しい展開だったのだが。
赤ん坊の頃からホームにいる俺にとって帰る場所はホームしかないのだが、途中から来て親の記憶がある詩音たちはそうじゃない。
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