プロローグ

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「おはよー! 俺ヨーグルトも食うから健太出しといて!」 Tシャツにパンツ一丁、寝癖というお決まりのスタイルでドタバタとリビングに入ってきたこいつは竜星。 歳は俺の一つ下で弟分だ。歳下のくせにえらそうに呼び捨てでいつも俺の事をこき使ってくる。 「ヨーグルトくらい自分で出せや、俺はかんの手伝いしよんや」 「無理! 今日朝からツレと映画の約束してんのに昨日風呂入らんと寝てもとってんもん。シャワー浴びてくるから出しといて。あっ……あと、かん! 今日俺おにぎりいらんで!」 横でかんが「はー? アンタそういうのは前の晩から言うとけいうたやろー」なんて眉間に皺寄せながら呟く。 しかし、慌ただしくリビングを出て浴室へ向かった竜星には聞こえていないだろう。 全く……17歳にもなろうとしてるのにまだ自己管理の出来ていない竜星にほとほと呆れながら、何を言っても無駄だと口をつぐみトーストをオーブンの網に乗せる。 「おはよう。ホンマあほやな、竜星は」 「おっはー、俺もヨーグルト食うから健太出してちょー」 バタバタと踵を返して出て行った竜星の後に広斗、クリスが続けて入ってくる。 広斗は着替えを済ませキチンと髪も整えていた。寝癖一つない。 コイツを見ているとホントに竜星と同い年か?と疑いたくなるほどの落ち着きようだ。 竜星と比べるから余計にそう思うのかもしれないが……コイツの精神年齢の高さは俺よりも遥かに上なのではないかと思う。 おまけに端正な顔立ちで物腰柔らかに女性にも優しいときたもんだから、女性が放っておかないのも納得だ。 「アホ! お前が自分と竜星の分出せや」 おちゃらけキャラのクリスが竜星に乗っかって俺に頼み事をしてきた件はバシッと言い返してやる。 コイツは俺と同い年で幼い頃から親友の様に育ってきた。 アメリカ人の父と母の間に生まれたらしいが、英語ペラペラな見た目と裏腹に、話せるのは関西弁だけ。 その見た目からよく英語で話しかけられては、気まずそうに『すみません、英語分からなくて……』なんて返すところを何度も見てきた。 相手からすれば詐欺もいいとこだ。
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