3時になったら出掛けよう

1/2
29人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
3時になったら出掛けよう。 今日は学校が休みの土曜日である。約束は夕方からなのでその時間に出れば十分間に合うだろう。昨日梅雨に入ったばかりで外はしとしと雨が降っている。少し肌寒いのでTシャツに薄手のパーカーを羽織っていこう。僕は洗面所に行き髪を整える。少し癖のかかった栗色の髪は雨の日になるとペタッとしてしまってセットしても直ぐに崩れてしまう。僕はドライヤーで頭に熱風をあてる。顔が火照ったようになり、髪がサラサラと熱風に踊らされた。 今日は上手く話せるといいな。 啓汰君を夕飯に誘ったのは2度目だが、前回は緊張して上手く話す事が出来なかった。英語の授業の話だとか部活の話だとか当たり障りのない話をしただけだ。それだけで数時間が経過してしまい僕達は肝心な話が出来ずに別れる事になってしまった。 男の子が男の子を好きになってはいけないのだろうか。 疑問が頭をよぎる。 啓汰君は僕の気持ちに気づいているのだろうか。 3時になったら出掛けよう。 僕は時計を幾度となく確かめる。嬉しさと緊張で身体がフワフワ自分の物で無い様に軽くなる。 僕の容姿は色白で中肉中背、脂肪もついていなければ筋肉だってそんなについていない普通の男子だ。小さな時は女の子に良く間違われた。それに比べ啓汰君はサッカー部に在籍していて、逞しい体つきをして色々な子にもモテている学校の人気者だ。僕なんか啓汰君と付き合う資格が無いのかと思っていたら、啓汰君はその時、僕の夕飯の誘いに気軽に応じてくれた。前回行ったのはイタリアンレストランだった。啓汰君はサッカー部で身体を使って疲れたと言って、スパゲティーとピザをペロリと平らげた。僕はその様子を見て打ち解けてくれた事が嬉しく、自然と笑顔になってしまったに違いない。啓汰君は恥ずかしそうに顔を少し赤らめた。 「僕、いつもこれ位食べるんだ。びっくりした?」 「びっくりなんかしないよ。僕だって食べる時は2人前くらい食べるよ」 「今日は食べてないじゃないか」 緊張してしまって食べられないなんて恥ずかしくて言えないので僕は黙ってしまった。 「どうした?調子悪いのか?」 付き合って欲しいって言いたかった。でもそれも緊張のせいで言えなかった。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!