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ください2
聞こうとしなくても入ってくるクラスメイトの女子達の会話。俺は曇り空の広がる空を見やりながら、心の中で溜息をついた。
二週間前に梅雨入りが発表されてから、晴れた日は片手で数えるほどだ。
俺の住むこの町では最近物騒な事件が起こっている。
雨が降った次の日の朝、この町で唯一の小さい神社の石段に人の生首が晒されるという殺人事件。
今のところ合わせて五件が確認されていて、事の始まりは今年初めての大雨注意報が発令されたその次の日。
雨の中殺害されたとされているにも関わらず、被害者が襲われたと思われる場所には雨に流されていても夥しい量の血が残されていたと言う。
加えて、被害者のうち一人も首から下は見つかっていない。
猟奇的で無差別であるこの殺人事件には目撃者が未だおらず、捜査は難航。この町の住人たちは雨の日の外出を戸惑うほどである。
「おっす涼太! お前今日の英語予習してきたか?」
女子達の会話を遮るように聞こえてきた声の方向に顔を向ければ、満面の笑みを浮かべる正人と目があった。
「おー。お前まさかまたしてきてないのか? そろそろペナルティの課題出されるぞ」
「そうなんだよ……! 頼む! 今回だけ予習見せてくれ!」
こいつは友達思いでとてもいい奴ではあるが、勉強に対してはからきしで予習や課題をよくサボるところがある。
パンッと両手を合わせて頭を下げる正人にノートを差し出せば、正人は嬉しそうに両手で受け取った。
「昼に購買の焼きそばパンな」
「サンキュー! 焼きそばパンな!」
どうせ予習をしてないとバレて出された課題を手伝う事になるのも俺だろう。予習を写させてやった方が、後が面倒くさくなさそうだ。
俺は隣の席で必死にノートを写す正人に、少しだけ呆れた笑いをこぼしたのだった。
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