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少年は学校からの帰り道、ゴミ捨て場で自転車を拾った。外見こそ古びていたが、パーツにも連結部分にも致命的な欠陥はなく、少し修理でもすれば乗れそうだった。実際に乗ってみると、それは予想以上に快調に走り出した。
「これなら、修理もいらないかもしれない」
そう思った少年は、そのまま自転車で周辺を走り回った。見た目とは裏腹に乗り心地は軽く、いつまでも走り続けられそうだった。
「よし、隣町まで行ってみよう」
少年はスピードを上げ、隣町に続く大通りへと進んでいった。
自転車は、漕げば漕ぐほどスピードが増していくようだった。夕方の大通り、渋滞に巻き込まれた車たちを追い抜かしながら、悠々と走るのは気持ちがよかった。
やがて、目的地の隣町に着いた。しかし、彼は走るのをやめなかった。もう少し先まで行きたいという気持ちが湧いてきていたのだ。
「もう1つ隣の駅くらいまでなら…」
彼はペダルを漕ぎ続けた。見慣れた隣町の商店街や住宅街がぐんぐん遠ざかっていく。普段なら電車やバスで来るような場所だ。帰るのが面倒になるかもしれないと思いつつも、先へ進みたいという気持ちが勝った。
そして、隣の駅まで着いてしまっても、その気持ちは収まらなかった。
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