傘はあたしの気持ちを隠してくれない

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 そして、マジックを取り出し中に何かを描いた。 「お前、可愛いし、目立つからもうこれからこの傘を使えよ」 「え?」  その傘の中にはマジックの太い文字で 『あゆみの大事な彼氏は聡だけ 聡の大事な女は聡だけ』  と描かれていた。 「これで、雨の日は俺しか見えないだろ」 「……聡。あたしにも、傘を買わせて。同じこと、あたしもしたい」  あたしは聡に傘を選んでマジックでメッセージを描いた。  そして、今あたしたちは別々の高校に通っている。 「あゆみちゃん、雨の日はいつも幸せそうだね」  新しい高校でできた友達があたしに言った。 「うん、大好きな彼氏しか見えないから!」  あたしはそう言って満面の笑みを浮かべた。
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