家啖い

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 他の若者たちも、続々と目を覚ましはじめた。  摩利藻をみつけると、彼らはちょっと驚いた顔をしたが、やって来たのが女一人で他に客はいないとわかると、とたんに警戒心も消えたらしい。  背伸びをしたり、身体のあちこちを掻いたりしながら、狐十郎と摩利藻のやりとりを、おもしろそうに眺めている。 「酒は返す。  持って行くがいい。  邪魔だったんだ。  俺たちは、一人も酒が飲めなくてな」  狐十郎は言った。 「だが、酒だけだ。  山は下りないし、火縄銃も返さん。  酒さえ戻れば、それで問題はなくなるんだろう。  そなたが親父殿から聞いた話からすれば」  たしかに、忠右衛門は酒のことしか言わなかった。  狐十郎は、鼻で笑った。
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