3人が本棚に入れています
本棚に追加
他の若者たちも、続々と目を覚ましはじめた。
摩利藻をみつけると、彼らはちょっと驚いた顔をしたが、やって来たのが女一人で他に客はいないとわかると、とたんに警戒心も消えたらしい。
背伸びをしたり、身体のあちこちを掻いたりしながら、狐十郎と摩利藻のやりとりを、おもしろそうに眺めている。
「酒は返す。
持って行くがいい。
邪魔だったんだ。
俺たちは、一人も酒が飲めなくてな」
狐十郎は言った。
「だが、酒だけだ。
山は下りないし、火縄銃も返さん。
酒さえ戻れば、それで問題はなくなるんだろう。
そなたが親父殿から聞いた話からすれば」
たしかに、忠右衛門は酒のことしか言わなかった。
狐十郎は、鼻で笑った。
最初のコメントを投稿しよう!