家啖い

21/39
前へ
/60ページ
次へ
 鎧兜に身を固め、十文字槍を身体の横に立てた、完全武装の鎧武者が、そこにいた。  忠右衛門だ。 「犬村(いぬむら)忠右衛門(ちゅうえもん)定勝(さだかつ)、ここに推参。  犬村(いぬむら)狐十郎(こじゅうろう)光重(みつしげ)、いざ尋常に、勝負」  一騎打ちをせよ。  と、忠右衛門は息子に挑んだ。 「正気か、親父殿。  俺は、銃を使うぞ」 「ひよっこが。  思いあがるな。  我が槍は、天下無双。  そのほうの火吹き棒なぞ、おそるるに足らず」  槍の石突で地面を叩きながら、忠右衛門を挑発した。  忠右衛門の顔色が、青い。  軽口のような言葉とは裏腹に、その表情は固く緊張していた。 「親父殿。  本気なのか」
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加