家啖い

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「武士が、冗談で一騎打ちなど挑むものか」 「本気なのだな」  狐十郎は、忠右衛門の槍の穂を見て、それから自分の手の中の火縄銃を見た。  そして兜の下の忠右衛門の顔を正視して、うなずいた。 「受けて立とう」  石段から本堂へとのびた石畳の道の上に、父と子は向かい合って得物をかまえた。  摩利藻は、両者がいっぺんに視界におさまる位置まで下がって、見守った。
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