家啖い

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 忠右衛門の鎧の下からしたたる血を見て、狐十郎が驚愕した。 「外したぞ。  たしかだ。  外した」  忠右衛門の、蒼白になった顔に、笑みが浮かんだ。 「鉄砲とは、おそろしいな。  かすめただけで、つい、いきんでしもうた。  (はらわた)が、こぼれてしもうた」 「陰腹を。  なぜだ、親父殿」  忠右衛門は、あらかじめ腹を切っておいてから、ここに現れたのだった。  忠右衛門は、口を開いたが、何も言わず、息絶えた。
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