3人が本棚に入れています
本棚に追加
忠右衛門はよく笑う。
つられて彼の家来たちも笑った。
すると突然、摩利藻の足下で、小石が砕けた。
わずかに遅れて、雷が落ちたような大きな音がした。
忠右衛門たちの笑顔が凍りつき、ついで、忠右衛門は満面朱をそそいだ。
「おのれ、バカ息子」
大音声で、雷の音がしたほうへ、叫んだ。
山の奥のほうで、まず笑い声が起きて、それから、
「どうだ、親父殿。
うまくなっただろう。
わざと、はずしたんだぞ。
どうやら、俺は筋がいい」
得意げに、声は言った。
「たわけ。
うつけ。
恥さらし。
罰当たり。
きんかん頭。
はげねずみ」
額に浮きでた血管をひくつかせながら、忠右衛門はおもいつくかぎりの罵詈雑言を吐き、そのうち喉に限界が来て、せきこんだ。
最初のコメントを投稿しよう!