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「親父殿は、鉄砲よりやかましいのう。
どれ。
一発で足らぬなら、もう一発、馳走いたそう。
動くなよ。
動くと、当たってしまうぞ」
狙いをつけている気配がした。
忠右衛門は奥歯が砕けそうなほど歯噛みしたが、鉄砲に狙われていては抗えず、わなわなと震えながら、その場で硬直した。
家来たちも、摩利藻も、動かず、待った。
森の葉陰をつらぬいて、鉛玉が来た。
鉛玉は、忠右衛門の髭の先端をかすめ、地面の石に命中し、はじけた。
銃声が、山にこだました。
「やっぱり、俺は、筋がいい」
山の奥からの声は、しみじみと自賛した。
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