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夏が来た。
やっと、名主たちが討伐隊を連れて帰ってきた。
一台の牛車と、その前後左右を守る武官が四名。
それが、討伐隊の総勢だった。
牛車には、討伐隊の隊長が乗っていた。
隊長は、目が痛くなるくらいにキラキラした装束につつんだ肥満体を、武官たちに助けられながら、やっとのことで牛車からおろした。
討伐隊は、まず風呂を要求し、それから酒と食事と女を要求した。
名主の屋敷が、彼らの歓待所になった。
それからは、連日連夜、飲めや歌えの大宴会がくりひろげられた。
「長旅でお疲れでいらっしゃるのだ。
まずは英気を養っていただかなければ。
妖怪退治というのは、尋常ではない難事業。
身にも心にも、たっぷりと力を蓄えねばならんのだ」
はてしのない乱痴気騒ぎの、あまりのひどさに、しだいにいらだってきた村人たちを、侍たちが説得した。
討伐隊が到着してからは、侍たちも、前ほどは威張らなくなった。
討伐隊の機嫌をとらなければならない一方、村人たちの怒りもなだめなければならず、侍たちは四六時中、気の休まるときがないようだった。
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